【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

 やられるっ!

 思った瞬間、俺の作った温かい水に触れ戸惑ったように動きを止めた。

 そして湖の主は、暗い目で俺たちを見つめたまま、俺たちを送り出すように手を振った。
 波が寄せてくる。先ほどとは違った、柔らかな波が岸に向かって俺たちを押し流す。

 送ってくれるのか?

 瞬いてみれば、湖の主は、ゆらゆらと手を振ってみな底で揺れていた。

 俺はベルンを抱えて、水面を目指した。紅いモミジの葉っぱが水面を教えてくれる。
 やっとのことで顔を出す。腰まで水に浸かった子供たちが、俺たちを引っ張り上げた。

「オブリ!! 行け!!」

 ウォルフが叫ぶ。
 俺の意識はそこで途絶えた。


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