【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「フェルゼン、君も黙って聞くように」
アイスベルク侯爵は、そっと微笑んで椅子に腰かけるように目配せする。柔らかいほほ笑みなのに、何か冷え冷えとしていた。
俺はおずおずと従った。
「オブリが君たちの危険を教えてくれた。みんな怪我もなかったよ」
ベルンが少しほっとしたように身体を緩めた。
「子どもたちは『悪いのは僕らだ』と言ったよ」
「そんな!」
「そんなわけないね、見ればわかるよ、ベルン。お前が何をしたのかなんて、見ればわかるさ。でも、彼らは言わなかったよ。お前たちが何をしたか言わなかった。『ちゃんと面倒見なくてすいません』って頭を下げたんだよ。腰までビッショリ濡れたままでね」
「っ……!」
ベルンは、声をあげて泣いた。