【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
いつものように、フェルゼンがシャワー室へ入っていくのを見送ってから、私は鏡の前できつく結ばれた髪を解いた。汗だくになった顔をバシャバシャと乱暴に洗う。
鏡の中では、濃紺の髪に、濃いブルーの瞳がきつく輝いている。
「出たぞ」
背中から声がかかる。
「いつもサンキュ」
そう言えば、フェルゼンは鼻を鳴らした。
コロッセオのシャワー室が一つだけなんて訳はない。
たくさんあるのに、同時に使わない理由。
フェルゼンが私のために、部屋の見張りをしてくれるからだ。