新米魔女はお嬢様!
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その恐るべき長さと中身の無さから、常人ならば31回は入眠必至という統計データをも叩き出している入学式(アナベル調べ)。しかしそれもいよいよ終盤。
突如ステージにスクリーンが張られ、そこに謎の空間が映し出された!
「執事、なんですのあれは!?」
「えーと……美術館か、博物館でしょうか?」
そう、それは何かの展示室に酷似していた。
狭い部屋である。
室内は薄暗く、四角いガラスケースにスポットライトが当たっている以外は、ほとんど何も見えない。
そのガラスケース内の″展示品″が大きく映し出されると、新入生たちは大きくどよめいた。
「あ、あれは……!」「こマ?」「そんな馬鹿な」「美しい……」
『この王冠は″陰陽魚冠″です。学外には秘匿していますが、管理権は我が校に有ります』
校長が新入生へ、マイクを通して語りかける。
″陰陽魚冠″とは、最高の魔法使いと国に認められた者だけが持てる幻の冠である。
人前ではさまざまな形をとるため、一部の人間以外はそれが冠であることにすら気づけないという。
普通なら見ることも叶わないはずの陰陽魚冠が今、その計算され尽くした姿を惜しげも無く現している。
多くの装飾や仕掛けが散りばめられ、あらゆる技術がそれを際立たせていた!
「まさか、その本当の姿を拝むときが来るなんて……!」
執事も感動で泣きそうである!
「……ほしい」
「……え?」
アナベルの不穏なつぶやきが執事の耳を刺す。
見るとアナベルの瞳は、新しい目標を見つけたように――ほしい玩具ができたように、キラキラと光り輝いていた!
「執事! あれをゲットしますわよ!!」
「言うと思いましたよ!」
アナベルは朗らかに拳を突き上げ、執事はげんなりと片手で顔をおおった!!