新米魔女はお嬢様!

◇◇◇

その恐るべき才能で警備網をかいくぐり、無事に陰陽魚冠のある部屋までたどり着いたアナベル。
赤外線ゴーグルと天井裏の金網ごしに室内の様子をうかがうと、どうやら警備員が壁の四隅に立っているようだ。

「執事、あいつらをぶちのめして――っ!?」

(ha)ーーー哈哈哈(hahaha)!!!!」

突如として謎の声が響いた!!

声の主は小柄な少女である。

ふわふわのドレスを身にまとっているのはアナベルと同じ。服装ふくめ身体じゅうの装飾が中華ちっくであり、黒髪を頭の両側でおだんごにしている。
その表情は笑顔ながら暗く歪んでおり、さきほどの声が嘲笑であることは一目瞭然。

おまけに後ろに控えた男の腕に捉えられて気絶しているのは、他でもない執事であった!

「どこのネズミかと思ったら、かわいい子猫ちゃんだたとは! いったいどこでココの地図を手に入れたアル?」
「そ、そんなもん校長に金積んだら一発ですわ!!」

天井裏から室内へと警備員に引きずり下ろされながら、謎の中華娘を睨みつけるアナベル!

「あラ〜。パパったらお金に弱いのよネ。まあいいアル、アチキが責任者であるうちはゼッタイ事件なんて起こらないアル〜」

言いながらパチンと指を鳴らす中華娘。
すると床に四角い穴が開き、アナベルと執事はその中に放り込まれてしまった!

「没シュートアル〜〜〜」
「キィィィィィ覚えてろですわーーーー!!!!」


ものすごい勢いで遠くなっていくアナベルの声と姿が分からなくなるまで見送った中華娘は、しゃんと姿勢を正すと警備員たちに指示を飛ばしていく。

その後隠し通路を抜け、自室のソファにそっと腰かけた。

「……アナベル・シャミナード」

白い頬が桃色に染まり、口許は深い曲線をえがいていく。
恋する乙女のような恍惚とした表情で、彼女は呟く……

「……想像イジョーに、かわいい()アル!」


机上に置かれた学生証には――ミトラル魔法学院、と刻まれていた!!
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