新米魔女はお嬢様!
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「うう……ひっく……、執事の馬鹿! 納豆完食した後で賞味期限がギリギリ過ぎてたことに気づけばいいんですわ!」
学校の屋上でひとり、大粒の涙をこぼすアナベル。
日頃暴虐の限りを尽くしているポンコツお嬢様の面影はどこにも見当たらない。
「アーナーベルっ」
突然のバックハグ!!
「ギャアアアア!! 痴漢!? 痴漢ですの!? 助けて執事ーーーーッッッ!!!!」
「ちょっ、痴漢じゃないアル! せめて痴女で!!」
青く広い空にアナベルの悲鳴と玲玲の弁明が響き渡る!!
「んもぅ、早とちりされちゃ困っちゃうアル」
「いや痴漢も痴女も似たようなもんですわよねよく考えたら」
しばらく阿鼻叫喚だったが、痴漢もとい痴女の正体が分かるとアナベルも大人しくなった。
「そんなことより、急に泣いたりしてどうしたアル?」
「……えっいや、執事が」
「あ〜執事クン! マジ最低アルよね!!」
「あなたが原因ですわよね!?!?」
信じられないものを見る目で玲玲を凝視するアナベル! 自分も大概であることには気づいていない様子!!
玲玲は顎のあたりに指を添え、悩ましげに小首を傾げた。もともと童顔気味ということもあり、その仕草はかなり可愛らしい。
これを怒鳴りつけるのは、さすがのアナベルをしても良心が許さなかった。何か言おうと開いた口をつぐみ、大人しく玲玲の言葉を聞くしかない――
「でもぉ、アチキはお昼休みにちょ〜っと話しかけただけアル。30分やそこらでお嬢様以外を優先するようになるなんて、想定してなかったアルよ〜」