新米魔女はお嬢様!

「えっ……そうですの!?」
「そーアル。向こうが勝手に距離を詰めてきたアル〜、アチキも内心タジタジだたアルよ」

眉を下げ、両手を広げて『やれやれ』のポーズをとって見せる玲玲。
仕草にわざとらしさはあるもののこれは彼女のクセのようだし、表情は自然で瞬きや呼吸の乱れもない。本当のことを語っているようにしか見えない。

そして何より、アナベルの推理小説マニア歴一週間の勘が、こう告げていた――

(この目は――嘘をついていない!!)


「執事……。私の方こそ、失望しましたわ……」

アナベルは地面へと視線を落とし、両手をきつく握りしめる。
全力で奮ったとしても、執事にはほとんど効かないだろう。そんなか弱い拳だった。

「……アナベル、可哀想アル」

すん、と鼻をすする音が前方から聞こえた。
顔を上げると、玲玲がその黒曜石のような瞳いっぱいに涙をためていた。

「とってもとっても可哀想。アチキならそんな思いさせないアル……アナベル、アチキが友達になるアル」
「……へ?」
「あんな浮気男より、アチキを見るよろし、アル!!」

正面からの真っ直ぐなハグ!!

玲玲の身長はアナベルよりも低い。にもかかわらず、優しく全てを包み込むような抱擁。
愛が、詰まっていた!

そんな愛の抱擁を受けながら、アナベルはそっと息をついた。

「……玲玲(リンリン)。あなたは――」

ゆっくりと玲玲の背中へと手をまわし――


「大嘘吐きですわーーーーー!!!!」


――全力で後ろに投げ飛ばした!!
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