ロマンティシズム
「ま、待ってください。先生、あの、これからどうされるんですか? 私とちょっとお茶とかしてみるとか、どうでしょ。コーヒーとか。デパートって乾燥しているし、喉とか渇いちゃってると思うんです。風邪ひきますよ。乾いていると風邪ひくんですよ。本当に!」

 大慌て。

「時間がないな」

「時間。ご用事ですか?」

 時計なんか見もしない、瀬戸の足は止まらない。

雪野はショップバッグをがさがさ言わせながら、追い縋った。

追い縋る……。

情けない言葉だ。
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