ロマンティシズム
「いらっしゃいませ。引換券を失礼致します」

 次から次へと途切れない客、そして行き交う群集と対面しているというのに、まったく疲れを窺わせない爽やかさだった。

そんな立派な店員の鑑、隙のない笑顔でショーケースを指し示し、はきはきと説明をする。

「ケーキの味はお選びいただけます。まだすべての種類が揃っていて、右からショコラ、クランベリー、マロンクリーム、キャラメルビター、ハニーピスタチオになります。いかがなさいますか?」

「えっ」

 い、いかがに。
と言われても。

「どうしよう……。私、頼まれた者なんです。えと……」

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