ロマンティシズム
 わかったらお声をおかけ下さい、と、明らかにほっとした笑顔でオネエサンは言った。

足元に置いていた荷物を拾いながら、雪野も笑い返す。

但しこちらは引き攣っている。

すみません、迂闊でした。

知っていたのに。
ブレイクニーのクリスマススペシャルが五択であることなら、ちゃんと雑誌で読んでいたのに。

記憶はさくさくとよみがえる。
ピスタチオが新メニューだなんてことまでも。


 ウィンドウから急いで離れ、後ろのカップルに場所を譲る。

彼女のほうが一歩前へ出て、迷わず、マロンクリームと口にした。
< 22 / 77 >

この作品をシェア

pagetop