ロマンティシズム
 雪野は振り返る。

人に阻まれ、ショーケースはちらとも見えない。

かろうじて覗くパウダーブルーの壁が店のすべてだった。ショップカラーなのだ。


 ケーキの味は五つ。
ショコラ、クランベリー、ハニーピスタチオ、キャラメル……と、もう一つなにか。

最後まで残るのはどれだろう?

「ハニーピスタチオって、どんな味でしょね。ハチミツと、ピスタチオ。未体験ゾーンですよ」

「あんな緑色のもんが食えるか。おまえに任せたら、もしかしてアレ?」

「あ、そうしたかも。それか、クランベリーを選んだかもです」

「あのピンクか……。電話してくれてありがとう」
< 32 / 77 >

この作品をシェア

pagetop