ロマンティシズム
 なんだか歪な『ありがとう』ならば戴けた。

まぁいいか。ご機嫌は全然悪くないのだ。

本当に怒っていたら、こんなにたくさん喋っていない。

 二年間というもの修行を積んだ雪野は、先生のご機嫌読みには自信があった――と、自慢するほどのものでもないのが残念だ。

瀬戸の喜怒哀楽はわかりやすい。その四つに分けるだけならば。

「先生はなにをしていたんですか? 他のお買い物?」

 だから安心して図々しくも、新たに出現していた紙袋の中を覗き込む。

「あ、ワイン。おぉ。ワインとケーキを持ったいい男。いいですね。クリスマスっぽいですね」
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