ロマンティシズム
 先生に会えて嬉しい、娘の名前は広瀬雪野。

先生、は彼女より二十センチほど高い身長を持つ、瀬戸啓明という男である。

彼らの関係は大学における助教授と、その指導対象の一学生。

 で、それ以上でも以下でもない。

一方がわかりやすくその先の展開を望んではいるが、現在のところまったくの脈なし、といった状況なのである。

情けないほど、悲しいほどに、半端なく片想い。さっぱり相手にされていない。

 大学は冬の休暇に突入し、ふたりは年明けの講義再開まで顔を合わせなかったはずだった。
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