ロマンティシズム
「えぇまぁ。粗忽者ですから」

「それ、漢字で書けるか?」

「書けません。先生は?」

「俺はいいんだよ。粗忽じゃないから」

 書けないんですね。

 などと言えようものではない。


 階段の途中から、もう賑わいが聞こえた。

小谷教室にはすでに大量の人間が集っているらしい気配が、弱い電気に薄暗い廊下を滑って伝わってくる。

大学一古いこの建物は、採光だの音響だのが独特だ。
そんなものにまで旧さを感じさせる。

 大量。
学生なんて、そんな扱いでいいですから。
< 45 / 77 >

この作品をシェア

pagetop