ロマンティシズム
 荒みきった雪野は自らも学生のくせに、そんなことを考え、ため息をつきながら腕に目を落とした。

現在、五時を過ぎたところ。

開始は六時からなのに、皆さんご苦労さまなことです。

 顔を上げると、瀬戸の背中が数メートル先に遠ざかっていた。

うう。
少しも待ってはくれないのだ。

雪野は小走りに後を追う。

お買い物時の幸せ気分はほど遠い。


 扉を開くと、入り口付近にいた学生が二人、振り向いて笑顔で言った。


「あ、センセイ。お帰りなさーい」

 雪野の親友、工藤日和と、

「お疲れ様でーす」

 日向の姉弟だ。
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