ロマンティシズム
 扉のこちらは、空気がとても暖かかった。

暖房の温さと、人の熱。

ふだんは本ばかりが目に付く学問の場が、すっかりモード・クリスマスに変貌をとげている。

例年登場のクリスマスツリーが、今年も派手なデコレーションを纏って立っていた。

誰のセンスか、今年は銀とピンクが基調だ。
銀の鈴とピンクのリボン。

かわいいじゃないか。


「あっれー、雪ちゃん、早いじゃん。どうしたんだよ、ヤケッパチショッピングは」

 ぼんやりと見上げていると、真横で日向が叫んだ。

彼は相手との距離で声を調節する、ということができない、のだと、長の付き合いの中で雪野は理解していた。

忘れて産まれてきたに違いない。
そう思えば腹も立たない。
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