ロマンティシズム
 所属する研究室の行事としては年内にもう一つ、クリスマスパーティというものが残っている。

だがこれには瀬戸の方が不参加を決め込んでいた。

 例年であればこのパーティは、教授の厳命にて講座の人間のフル参加(全員、そして最後まで)が決定付けられているものなのだ。

それが、なんと今年は小谷教授、リゾートのサマークリスマスにお出かけ召されてしまったのである。

主謀者の逃走により、各自には自由選択権が与えられた、と、なれば、瀬戸助教授は嬉々として欠席を宣言する。

学生に塗れてのバカ騒ぎを、義理でも楽しむような男ではない。

ただ研究に便利だから、が大学に残った唯一にして崇高な理由、立場に付随して発生する学生の指導や学校運営の為の仕事一般は、彼にとってはひたすらに、できうるものなら回避するばかりの対象なのである。
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