ロマンティシズム
 あぁ、と雪野は思い出した。

一番、ですか。そうですね。

ケーキはいろいろなお店のものを用意して、ビンゴの勝利者順に選べるのでした。

そんな企画を言い出したのは自分だった。

まだ瀬戸の不参加を聞かぬ頃、嬉々としてプランニングの先陣を突っ走っていた自分のことなど、全然さっぱり忘れ去っていた。

「こら、雪野」

 ガツンと突き刺さるような声。

再びいつの間にやら背後に迫り、日和はブッチョーヅラだった。

「あんた、私たちとの約束を放り出そうとしたね? そうだよね? センセイの行き先を知らなかったくせに付いてきたって、そういうことでしょ。雪野」

「う。まぁ」

 なんと見事なお見通し。
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