ロマンティシズム
「はははー、どうかな、それは。雪野みたいに捨て身の恋はしたことがないから、わっかんないわー」

「捨て身じゃないから! まだそんなに切羽詰ってないから、私だって」

「それもどうだろう。どうですか? 先生」

「捨ててあっても拾わないぞ」

 えぇまあ、先生ならそう言うだろうと予測可能なんですが。


 あぁ、と雪野はがくり項垂れる。

ずるると荷物を引きずりながら、教室の隅にと移動。ずっとそれを提げたままでいたのだ。

もう、手なんて痺れて感覚がない。


 未だかつてないほど高くまで昇っていた上に、落ち方が急激だったもんだから、ショックが大きいのなんの。

決して三人のものだけではない笑い声が纏わりついて、鬱陶しいわイラつくわ、もう。
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