ロマンティシズム
 聞こえよがしに囁き交わす。
それも引き続きシャットアウト。

雪野は瀬戸だけに向き合い、ソムリエのようにラベルを掲げて見せる。

コルクを外し注ぐ動きも粛々と。

まるで何かの儀式の手順のように丁寧さで、本日何十何回目のその動作は行われた。

 ソムリエ娘、ボトルをテーブルに置き、きっぱりと言う。

「乾杯なのです」

「なににだ? ヒロセ」

 瀬戸は楽しそうだ。

火の点いていないタバコをくわえ、足を投げ出し、意外にもゆったりと寛いだ様子でいる。

嫌々参加のパーティなのに、なにか覆すものがあったらしい。
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