ロマンティシズム
この宴もたけなわ、気化し蔓延したアルコール度五十パーセントの空気の中で(イメージ)、雪野は失われた思考回路を取り戻そうと奮戦する、も、虚しく、出てきた言葉は極めて本能の呟きだった。

 本能。
生きるために必要な、最低限のこと。
失くしたら命を喪う、そんなレベルのもの。


 小さな声が言う。

「……クリスマスに……」

「普通だな」


 かす、と。そんな音がした。
ワイングラスではないのだ。

瀬戸は愛用のマグカップ、雪野の手には紙コップなので。
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