ロマンティシズム
 と指を差し一声あげた。

直後。

雪野はすとん、と座り込んだ。

そのまま横に転がってしまう。

ころん。
すうすう。

健やかな寝息だ。


 一連の動きが速すぎて、驚く暇もなかった。

テーブルを囲んでいた三人は、顔を見合わせて笑い出す。

他テーブルの面々は、一向異変に気づいていない。

もっともこんな飲み会の席、倒れる人間が出ないほうが珍しいので、気付いたとしても笑われるだけですが。


「大した態度だ。呼び捨てかよ」

「あぁ、まぁ雪ちゃん、けっこ激しいオンナだから」

「あぁ、ね。打たれ強さには激しいものがあるわよね」

「思い込みとか」

「妄想とか」
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