ロマンティシズム
 姉弟は笑いながら、何度目なのかの乾杯をする。

アルコールが楽しく回ってきていた。

お酒は楽しく飲みましょう。

人の恋などを肴にしまして。

「酒の飲み方も激しいな」

 落ちた紙コップを拾いながら、瀬戸は弾みで倒れたボトルを見るのだった。

まったく。やっと成人の娘の所業ではない、などと思うほど、瀬戸が学生に対して夢など抱いているわけもない。

もう十年もセンセイをやっているのだ。

そしてその前は学生だったのだ。


 つつつ、と、日和は瀬戸に近付く。

缶ビールを手にしてなぜか、色気薫らす上目使い。
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