Tiny Promise ~アイドルHinataの恋愛事情【4の番外編のおまけ】~

 ……わかってないなぁ、ママは。
 さーちゃんのおうちのおそばも、そりゃぁおいしいけどさ。
『さーちゃんが作ったごはん』が食べたいんだよ、ぼくは。
 この、シロツメクサとクローバーで作った……。


「さーちゃん、きょうの、このごはんって、なに?」
「おそばだよっ」
「おそば?」
「うんっ。だって、メイくん、サヤのおうちのおそば、だいすきでしょ?」

 さーちゃんは、シロツメクサとクローバーがはいっている、お砂場セットのザルをぼくに差し出して、ニコッとわらった。

「……うん。だいすき」
「こっちは、天ぷらね。それで、これがわさびっ」

 『ふじだな』にぶらさがっている豆さやの『天ぷら』と、オオバコの『わさび』もザルの上にのっける。


 いつか、食べたいとおもってる、おとなの味。『天ざるそば』。
 コドモのぼくたちは、なかなか食べさせてもらえないんだよ。
 しかも、『わさび』までつけてくれるなんて。
 やっぱ、さーちゃんは、ぼくのこと、わかってくれてる。

 これがホンモノだったらいいのになぁ……。


「さーちゃん、あのさ……」
「ん? なに?」
「その……おそば、作ってほしいんだけど」

 ぼくが言うとさーちゃんは、ん? と首をかしげて、

「おかわりなら、まだたくさんあるよっ。ほらっ」

 と、バケツに山もりになってるシロツメクサを指差した。

「そうじゃなくてっ。さーちゃんのおうちの、ホントのおそば、作ってよ」
「サヤのおうちの? ……ムリだよっ。だって、サヤ、まだコドモだもんっ」

 言いながら、さーちゃんは、ぷぅーっとほっぺたをふくらませて、でもすぐに、顔がくしゃくしゃってなって…………あぁぁ、なんで泣くかなっ!?
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