死神に誘われて
そう思って絵芽に近づこうとするけど、体に力が入らなくなって、僕は床に倒れ込む。

「……っ」

うまく息が出来ない。苦しい……。

「やっと効いて来たんだな……」

嬉しそうに、父さんは笑った。

「な、何の……話、だ……っ」

「今学校中についてるこの火からはな……僅かにだが、死神だけに効く毒ガスが出てるんだ。それを、お前は普通に吸い込んでただろ?」

……ダメだ。頭が……回ら、ない。

言葉は聞こえてくるけど、理解が追いつかない。苦しい……誰か、助けて……。

「……でも、これは呪術。呪術で、毒ガスを浄化すれば良いだけの話だ」

その声を最後に、僕の意識は途切れた。



僕が目を覚ますと、木に囲まれた草原で横になってた。

「……よ、良かった~……」

死神が着てるのと同じ服を着た、セミロングに緑目の女の子……絵芽は、僕と目を合わせると安心したように笑う。

「え、絵芽……?」

「……そうだね。でも、もう私は、若月 絵芽じゃない。私は、エメル。ノーチェが、眠っている間に死神になりました」

絵芽……じゃなくてエメルの言葉に、僕は驚くことしか出来なかった。

「……私ね。死んじゃったみたいなんだ……ルクとノーチェと同じ担当区になったから、よろしくね!」

……あれ?エメルって、呼び捨てじゃ無かったような……。
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