死神に誘われて
「……ふぅ」
何とか悪霊を倒し終えて、僕はため息を吐く。呪術を解いて刀を消すと、絵芽の方を見た。死神の状態である僕を、絵芽はじっと見つめてる。
「極夜くん……君は一体……」
「……やっぱり、僕の姿が見えるんだ。僕は、月森 極夜なんかじゃないよ……僕は、ノーチェ。死神」
絵芽からペンダントを受け取って、首にかけながら僕は微笑んだ。
「死神って……霊を天へと導く存在だと言われている……」
「そうだよ。よく分かったね……てか、驚かないの?」
僕が問いかけると、絵芽は頷いてから口を開く。
「……私の育ての母親は、私と同じように霊感が強いらしくて……たまに死神の話をしてくれるんだ」
絵芽のお母さんも死神と会ったことがあるんだ……って、ん?
「育ての母親……?」
「うん。私、数年前に生みの両親から捨てられたの。その時、お母さんに拾われて……」
俯きながら、絵芽は話した。
「……そっか……」
絵芽の話に、僕は何も言えなくなる。絵芽は「でもね。今の方が幸せなんだ!」と微笑んだ。
「えっと、それで……極夜くん、じゃなくて……」
「ノーチェ」
戸惑ってる絵芽に、もう一度、僕は本名を言う。死者が死神となる時、生前とは全く違う名前になるんだ。