死神に誘われて
……理由は、よく分からないけど。

「ノーチェ……素敵な名前!」

僕の名前を呟いた後、絵芽はそう言ってニコリと笑った。その笑顔を見た途端、頬が熱くなる。

「……とりあえず、帰ろっか」

僕はそう言いながら、絵芽に背を向けて歩き始めた。



僕が、ここに来て1週間。今日は、絵芽に誘われて、2人で遊ぶことになった。

「……私、男の子と2人きりで遊ぶの、初めてなんだ~」

普段下ろしてる髪をハーフアップにした絵芽は、ニコリと笑う。

「……そういや、僕も初めてだな」

パーカーのポケットに手を入れながら、僕は呟いた。ルクと遊んだことはあったけど、女子とは遊んだことないや。

「とりあえず、カフェにでも行こうよ!美味しいところ知ってる!」

絵芽はそう言って、僕の腕を掴むと走り出す。僕は、抵抗することなく引っ張られるままに走る。

「ここだよ」

小さな店の前で絵芽は立ち止まると、僕から手を離した。

「……っ」

この気配……悪霊か?

「……極夜くん?」

店に入ろうとした絵芽は、僕の偽名を呼びながら振り向く。2人の時以外、僕の本名は呼ばない、と絵芽は言ったんだ。

「……いや、何でもない……」

そっか。死神だけだもんね……悪霊や物の怪の気配を感じ取れるのは……。
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