君がいたから 陽翔、結菜side
しばらく間、蓮先生に頭を下げた後、
玄関のドアを開ける。
「蓮先生、こんな寒いところでごめんなさい」
「ありがとうございます
結菜さんも今日は温かくして下さいね 」
蓮先生はすっかりといつもの穏やかな表情になって、帰っていった。
誰もいなくなりシーンとすると、さっきまで我慢していた涙がこみ上げてくる。
「うっ……」
蓮先生が守ってくれるとはいえ、
結愛が辛い思いをするのは間違えない。
結愛まだ16歳なのに
これから高校生活を楽しむ時期なのになんでなの ?
それに、もし治らなかったら………
私のときはたまたま抗がん剤がすぐ効いてくれたけど、効果がないって場合もある。
効かなければどうなるかなんて私でもわかってる。
どうしよう?
一人でいるとどんどん暗い方に考えてしまう。
どうしたらよいの?
陽翔や蓮先生みたいに医者じゃないから、自分が無力だってことは知っている。
何かしてあげたいけど、そんな方法も思いつかなかった
「私…なんて………うっ…」
寒い廊下で泣いてしまって、
そのまま動く気にもなれなかった。