俺のボディガードは陰陽師。~第三幕・不穏な悲鳴~
くっ…!
目の前に、これから被害に合うかもしれない人がいるのに…!
しかし、綾小路室長の言い分も頷ける。
中は俺達にとっては、まだ未知の領域だ。
それに、これから被害に合うかもしれないっていうのは、あくまでも想像の話、仮定。
一行が扉の向こうへ行ってしまい、扉が閉まるのをただ黙って見送ることになっても。
ここはグッと堪えるしかなかった。
「…拓狼さん、でも、これって」
なずながそう言い掛けると、返答が。
『ただいま二年の伊藤梨子の所在を関係者に認証してます。…うん、なずなの言うとおり、傷害的にもクロの確率高くなったね?もし想像通りのことがされていたのなら、現行犯逮捕。我々が突入します』
「…了解」
『…橘くん』
「…は、はい」
綾小路室長の優しい声が、耳に響く。
『絶対、大丈夫だから。上手くいく。だから今は堪えて』
「…はい」
『式神の帰還を待ちましょう』
「…わかりました」
…だが、そう宥められても、焦る気持ちは治まるワケではなく。
もしこれで、想像の通り、伊藤さんに何かあったら。
凌憲が…悲しむ。
言われた通り、待機。
ソファーに深く座り込むが。
正直、落ち着いてはなど、いられなかった。