俺のボディガードは陰陽師。~第三幕・不穏な悲鳴~
(…あっ!)
VIPレディクラの到来があまりにも突然だったからか、あまり気にしなかったけど。
気付くとその体勢は。
なずなが俺の腕の中に、すっぽりと収まっている状態だった。
密着状態。
し、しまった。
(………)
…て、ワケでもない。
この柔らかい感触と温度。
抱きしめてると…何だか、すごい気持ちいい。
いい匂いもする。
…そして、先日のことを思い出してしまう。
雑居ビルの地下での、あの時のことを。
その時も、こうしてギュッと…。
(………)
頭の中で、パチンとスイッチの切り替わる音がした。
抱きしめる腕にギュッと力が入る。
「…お、おいおいおい、離してって」
「離さない」
「…えぇっ!な、何でっ!」
両掌でグッと胸を押し付けて、俺から離れようとするが。
向こうがふと顔を上げた時。
ふいに、目が合ってしまった。
「あ…」
そうなると、もう止められない。
自分の掛けている眼鏡をデコの上に上げて。
なずなの眼鏡も同様に、デコの上にずらす。
「えっ?えっ?…あぁっ!」