俺のボディガードは陰陽師。~第三幕・不穏な悲鳴~

「バケモノって…」



なずながそう言いかけた時。

ちょうど背後にある個室のドアがガチャッと開いた。

物音に反応してそっちに注目すると、そこには人が一人…。

作業着姿で帽子を被っており、手にはデッキブラシとバケツを持っている。

業者…?



誰だ?…VIPレディクラ以外の人物が、このスペースに?

しまった…!



猪狩ただ一人は警戒していない。

むしろ、助けを求めるように身を乗り出した。



「…あ、掃除のおじさん!た、助けて下さいっ!」



掃除の…おじさん?!



…だが、それは。

ほんの一瞬の出来事だった。



「…なずなっ!」



掃除のおじさんは、ドアをバタンと閉めてこっちにやってくる。

猪狩の訴えに反応したのかと思いきや。

実はそこには全然目もくれず、手にしたバケツをそこらに放り投げ、両手でデッキブラシを振り上げる。

その矛先は、なずなだった。



「…ちっ!」



第一撃は、間一髪後方に跳んで回避する。

しかし、一撃だけでは済まさず、振り回されるおじさんのデッキブラシはブンブンと音を立てて、次々となずなを襲う。

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