俺のボディガードは陰陽師。~第三幕・不穏な悲鳴~
魔獣に向かってなずなは頷く。
まるで、魔獣と疎通が取れているようだ。
なずなにも、この声が聞こえたのか?
「わかった」と告げたなずな。
檻の角へと移動し、魔獣に「こっちだこっち」と手招きする。
ゆっくりと顔を上げ、キリリ…と短く鳴いた後。
檻越しのなずなの方へと、ゆっくりのそのそと足を進める。
「ここでステイだ。ステイ」
両掌を見せて、待ての仕草をして言い聞かせながら、魔獣の陰に隠れている生徒会の伊藤さんに視線と顎で指示する。
「移動しろ」と。
踞って怯えていた伊藤さんだったが、なずなの指示に気付くと、無言で頷く。
そろりそろりと歩いてその方向…檻の出口の前へと移動した。
「…おい!何やってる!」
檻の周辺の出来事に気付き、VIPの一人が声を荒げる。
だが、なずなはそれを無視して魔獣の前から離れ、伊藤さんの待機している檻の出口へと小走りで向かう。
「…おいっ!」
出入口の外鍵を開け、ガシャンと扉を開けた。
「こっちだ」
伊藤さんの手を引っ張り、檻の外に出す。
直ぐ様、檻の扉を閉めて、再び鍵をかけた。