俺のボディガードは陰陽師。~第三幕・不穏な悲鳴~
傍にいた薫の呼び止める声も聞かず。
なずなを囲むVIPらを突き飛ばして掻き分ける。
「…橘っ?!」
一ノ瀬が乱入してきた俺に気付く。
その緩んだ一瞬の隙に、なずなを捕らえる一ノ瀬の手に、手を伸ばした。
今度はこっちがなずなを背に庇うように、二人の間に入り込み、一ノ瀬の手を瞬時に捻り上げる。
「…伶士?!」
「いいぃぃっ!…何すんだ橘っ!」
「…そいつから手を離せ!」
殺されるぞ!
俺のサプライズ襲撃に、一ノ瀬の手はなずなから離れた。
そこから更に距離を離すために、そのまま遠くへ一ノ瀬を突き飛ばす。
一ノ瀬は、向こうの方へゴロゴロと転がっていった。
「れ、伶士!何割り込んできてんだ!」
振り返ると、なずなが驚いてムキになった表情を見せている。
先ほどの血走っていた目付きは、いつの間にか消え失せていた。
いつもの、なずなだ。
「…のけ!」
「…おまえこそ、何やってんだ!」
「は…」
「その、人を救う大切な力で、人間を殺す気か!…その為の力じゃないだろ!」