俺のボディガードは陰陽師。~第三幕・不穏な悲鳴~
その一言を耳にして。
なずなは、ハッとした表情になる。
「わ、私…」
「…わかればいい!わかれば!」
なずなのその陰陽師の力は…感情に身を任せて、相手を傷付けるための力ではない。
苦しんでいる多くの人を救うための力だ。
誰もが簡単に使うことが出来るワケではなく。
選ばれた者だけが使える、尊い力。
それは、その力で助けてもらった…肌で感じた俺がよくわかってる。
「このっ…橘あぁっ!」
後ろで、一ノ瀬の叫び声と足音が聞こえてきた。
チラッと振り向くと、その矛先を俺に変えたのか、拳を振りかざしてこっちに向かってくる。
っつーか、俺の敵じゃねえ!
「…伶士!」
「…対人間は俺に任せろって言ってるだろ!」
向けられた拳は掌で掴んで引き寄せる。
「…わっ!」
体勢が崩れた一ノ瀬の空いた腹に一発、ミドルキック。
見事にキマって、一ノ瀬は地に崩れ落ちた。
…だから、敵じゃねえんだよおまえは!
しかし、仲間がやられて黙っているはずがない。
「一ノ瀬さん!…何してくれてんだ橘あぁっ!」