俺のボディガードは陰陽師。~第三幕・不穏な悲鳴~
「…うわっ!」
振り向く間もなく、体をガクンと後ろに強い力で引っ張られる。
気付くと…真上から落ちてきた黒い羽根は纏まって一つの帯となり、俺の体を一気に拘束していた。
そして、黒い翼の彼の手の中へと引き寄せられる。
彼の不自然過ぎて不気味な笑みが視界に入った。
何?…何が起こった?
何で、この彼がここに?!
「伶士っ!」
「…橘くん!」
なぜ…俺が捕まった?!
俺の体を抱えた黒い翼の彼は、もう一度、俺の耳元で囁く。
「…本当はさ、あんなズタズタの弱りきった魔獣なんて、もういらないんだよね?」
「えっ…」
「君さえ手に入れば…ねぇ?『夢殿』」
なっ…夢殿?
って、何。
「橘くんから手を離しなさい!リグ・ヴェーダ!」
鬼気迫った怒鳴り声で、こっちに銃口を向けるのは、綾小路室長だ。
表情もいつもの涼しそうなものではなく…目がつり上がって、険しいものになっている。
それをバカにしたように、彼は「あははっ」と笑う。
「その様子じゃ…彼が何だかわかってるみたいだね?」