俺のボディガードは陰陽師。~第三幕・不穏な悲鳴~
「…ま、待て!逃がすのか!」
「『逃げるなら逃がしても良い』ボスの命令です、なずなサン!」
「…んだとっ!」
そんな答えじゃ、到底納得出来ないのか。
なずなは、翼を動かす彼を走って追う。
しかし、翼が起こす突風に阻まれて足を止めざるを得ない。
「くっ…待てっ!」
もがいてもがいて、突風を振り切ろうとするが、前に進むことが出来ない。
結局、なずなの声は届かず。
破れた翼と渦巻く突風に身を隠して。
うねる風が止む頃には、彼の姿はもうなかった。
「に、逃げたっ…」
しばらく辺りを見回した後、どうにもならないとわかったのか。
影すらも何もなくなった、その場に立ち尽くす。
少しの間、静寂が訪れていた。
「………」
立ち尽くすその背中は、ガッカリしてるのか肩を落としているように見えて。
不安にもなるが。
「…なずなサン」
でも…手がわなわなと震えている。
「玲於奈…」
「ハイ」
ゆっくりと顔を上げて、こっちを見るが。
「…何で逃がしたんだ!玲於奈コラアァァッ!」
…大変、ご立腹のようである。