俺のボディガードは陰陽師。~第三幕・不穏な悲鳴~
しかし、魔獣が田丸さんに近付かなければ脅しにならない。
その様子を見て高橋らVIPやレディクラはイライラし、恐らくあの時のように…檻の隙間から、魔獣に殴る蹴るの暴行を始めた。
レディクラの中には、カッターを取り出して、魔獣の皮膚を傷付ける者も。
その度に、魔獣は悲鳴ともとれるあの耳障りだけど切ない悲鳴をあげる。
その光景と、悲鳴を聞いて。
動物好きの田丸さんは、なんとも言えないいたたまれない気持ちになったという。
『…や、やめろ!その子を傷付けるな!』
田丸さんが高橋たちの暴行を止めようとした時。
暴行でグラグラ揺れ、あちこち檻にぶつける魔獣の体から、紙切れが一枚ヒラリと落ちた。
《…ギャアアアァァァッッ!!》
…その悲鳴を最後に、田丸さんの意識は落ちた。
しかし、田丸さんは。
遠退く意識の中で、ずっと声が聞こえていたというのだ。
ごめん。ごめんね。
おさえられなくて、血をのんじゃった。
お母さんにダメだって、いわれてたのに。
にんげんが、だいすきなのに。
きずつけたくなかったのに。
ごめん。ごめんね。
おねがい、しなないで。
ぼくのちから、あげるから。
ぼくは、しんでもいいから。
おねがい、しなないで。