俺のボディガードは陰陽師。~第三幕・不穏な悲鳴~

しかし、魔獣が田丸さんに近付かなければ脅しにならない。

その様子を見て高橋らVIPやレディクラはイライラし、恐らくあの時のように…檻の隙間から、魔獣に殴る蹴るの暴行を始めた。

レディクラの中には、カッターを取り出して、魔獣の皮膚を傷付ける者も。

その度に、魔獣は悲鳴ともとれるあの耳障りだけど切ない悲鳴をあげる。



その光景と、悲鳴を聞いて。

動物好きの田丸さんは、なんとも言えないいたたまれない気持ちになったという。



『…や、やめろ!その子を傷付けるな!』



田丸さんが高橋たちの暴行を止めようとした時。

暴行でグラグラ揺れ、あちこち檻にぶつける魔獣の体から、紙切れが一枚ヒラリと落ちた。



《…ギャアアアァァァッッ!!》



…その悲鳴を最後に、田丸さんの意識は落ちた。




しかし、田丸さんは。

遠退く意識の中で、ずっと声が聞こえていたというのだ。





ごめん。ごめんね。

おさえられなくて、血をのんじゃった。



お母さんにダメだって、いわれてたのに。

にんげんが、だいすきなのに。

きずつけたくなかったのに。



ごめん。ごめんね。



おねがい、しなないで。

ぼくのちから、あげるから。

ぼくは、しんでもいいから。



おねがい、しなないで。




< 354 / 492 >

この作品をシェア

pagetop