名古屋錦町のあやかし料亭~元あの世の獄卒猫の○○ごはん~
第9話 凶は吉へと
そこからは、きちんと大須観音で初詣を済ませるのに行列に並び。
それぞれの彼氏様に、動きにくい振袖でも丁寧にエスコートされてから参拝して。四人全員おみくじを引いたが、見事に美兎以外は大吉となり。
美兎だけが、凶だったので急いで結び場にくくりつけに行った。
「大丈夫よ、湖沼ちゃん? あくまで運勢なんだから」
「けど……幸先悪いです」
沓木が慰めてくれても、心はもやもやしたままだ。すると、反対側から軽く頭を大きな手で動かされ。ぽすんと温かい場所に抱きこまれた。
「大丈夫ですよ? 天国在住ではありませんでしたが、僕がいますかから」
「き、き、響也さん!?」
目立ちにくい場所にいるとは言え、他に人目があることに変わりないのに。火坑は片手で大胆に美兎を自分の懐に抱きとめたのだ。
「きょーくん、やるぅ」
「初々しいわねえ?」
「俺達もする?」
「ここはヤダ」
「えー?」
バカップルがもうひと組いるのに、やはり経験の差を考えると沓木の対応は大人だ。さすがとしか言いようがない。
火坑は少しの間笑ってから、美兎を解放してくれた。
「とりあえず。当初の目的は終わりましたが……。女性のお二人は、足など痛いところはありませんか?」
「……えーと」
「正直言って疲れたわ。このまま露店歩き回るとか無理」
「だろーね?」
美兎は二年ぶりでも、草履で長時間歩くのは痛みを伴う。
沓木もかなり久しぶりらしいから、そこは同じく。
どうしようか、と二人で顔を合わせたら。火坑がぽんと手を叩いた。
「であれば、うちの店まで移動しましょう。人目のつきにくい場所までは頑張ってください。そこから妖術で移動します」
「い、いいんですか??」
「ええ。食材もありあわせ程度ですが、まったくないわけではないので」
と言うわけで、また大須観音駅の地下鉄ホームまで移動して。瞬時に、火坑の妖術で錦の楽庵まで瞬間移動出来た。
しかも店の中だったが、暖房をあらかじめつけておいたのか。室内はとても温かった。
「あら? 暖房つけておいたんですか?」
沓木が問い掛ければ、火坑は元の猫人に戻りながら涼しい笑顔で微笑んだ。
「食材の関係もありますが。今日ご迷惑でなければ、皆さんをお誘いする予定だったんです」
「あら」
「ナイス! 火坑君!」
「ありがとうございます!」
完全なプライベートだが、元旦から火坑の手料理が食べられる。
こんなに、嬉しいことはない。と、美兎は足の痛みも吹き飛ぶくらい嬉しかった。
「さて。お餅はまだ届いていないですし。蕎麦は遠慮したいでしょうから……」
「火坑さん、火坑さん!」
「何でしょう、美兎さん?」
提案をするのに、美兎は椅子に座る前に手を差し出した。
「私の心の欠片を使ってください!」
「心の欠片??」
「ケイちゃん、俺とか火坑君が人間からちょっとだけもらう栄養源の話したの覚えてる?」
「あ!……じゃあ、せっかくだから。私のも出せそうなら」
「かしこまりました」
それからはお節料理とかではなかったが。
身内だけの温かい集いが出来たと思うくらい。楽庵でのんびりとお正月デートを過ごすのであった。
それぞれの彼氏様に、動きにくい振袖でも丁寧にエスコートされてから参拝して。四人全員おみくじを引いたが、見事に美兎以外は大吉となり。
美兎だけが、凶だったので急いで結び場にくくりつけに行った。
「大丈夫よ、湖沼ちゃん? あくまで運勢なんだから」
「けど……幸先悪いです」
沓木が慰めてくれても、心はもやもやしたままだ。すると、反対側から軽く頭を大きな手で動かされ。ぽすんと温かい場所に抱きこまれた。
「大丈夫ですよ? 天国在住ではありませんでしたが、僕がいますかから」
「き、き、響也さん!?」
目立ちにくい場所にいるとは言え、他に人目があることに変わりないのに。火坑は片手で大胆に美兎を自分の懐に抱きとめたのだ。
「きょーくん、やるぅ」
「初々しいわねえ?」
「俺達もする?」
「ここはヤダ」
「えー?」
バカップルがもうひと組いるのに、やはり経験の差を考えると沓木の対応は大人だ。さすがとしか言いようがない。
火坑は少しの間笑ってから、美兎を解放してくれた。
「とりあえず。当初の目的は終わりましたが……。女性のお二人は、足など痛いところはありませんか?」
「……えーと」
「正直言って疲れたわ。このまま露店歩き回るとか無理」
「だろーね?」
美兎は二年ぶりでも、草履で長時間歩くのは痛みを伴う。
沓木もかなり久しぶりらしいから、そこは同じく。
どうしようか、と二人で顔を合わせたら。火坑がぽんと手を叩いた。
「であれば、うちの店まで移動しましょう。人目のつきにくい場所までは頑張ってください。そこから妖術で移動します」
「い、いいんですか??」
「ええ。食材もありあわせ程度ですが、まったくないわけではないので」
と言うわけで、また大須観音駅の地下鉄ホームまで移動して。瞬時に、火坑の妖術で錦の楽庵まで瞬間移動出来た。
しかも店の中だったが、暖房をあらかじめつけておいたのか。室内はとても温かった。
「あら? 暖房つけておいたんですか?」
沓木が問い掛ければ、火坑は元の猫人に戻りながら涼しい笑顔で微笑んだ。
「食材の関係もありますが。今日ご迷惑でなければ、皆さんをお誘いする予定だったんです」
「あら」
「ナイス! 火坑君!」
「ありがとうございます!」
完全なプライベートだが、元旦から火坑の手料理が食べられる。
こんなに、嬉しいことはない。と、美兎は足の痛みも吹き飛ぶくらい嬉しかった。
「さて。お餅はまだ届いていないですし。蕎麦は遠慮したいでしょうから……」
「火坑さん、火坑さん!」
「何でしょう、美兎さん?」
提案をするのに、美兎は椅子に座る前に手を差し出した。
「私の心の欠片を使ってください!」
「心の欠片??」
「ケイちゃん、俺とか火坑君が人間からちょっとだけもらう栄養源の話したの覚えてる?」
「あ!……じゃあ、せっかくだから。私のも出せそうなら」
「かしこまりました」
それからはお節料理とかではなかったが。
身内だけの温かい集いが出来たと思うくらい。楽庵でのんびりとお正月デートを過ごすのであった。