名古屋錦町のあやかし料亭~元あの世の獄卒猫の○○ごはん~
第6話『柚子シャーベット』
会えて良かった。
美兎は心からそう思えた。
自分の祖先である、覚の空木とその妻である美樹と出会えたことだ。
はるか年上であるのに。自分の恋人である火坑もだが、年齢差を感じさせないくらい気さくで、温かで優しくて。
おまけに、現代の携帯機器などを使いこなしているとは凄い。美樹のプロフィールを見に行ったら、とても可愛らしい小物などの作品がアイコンなどに使われていた。
「かんざしもだけど、レジンでアクセサリー作るのが得意になったの。だから、それも仕事にしているわ」
直接誰かと顔を合わせて仕事にしているわけじゃないらしいので、ネット販売で切り盛りしているそうだ。それは実にやりやすい仕事かもしれない。
「好きなことがお仕事に出来るって素敵です」
「ふふ。ありがとう。美兎も出来た?」
「はい、お陰様で」
好きもあったが、犠牲にしてきたものもあった。
けど、それが全て無駄にはならなかった。
火坑達にこうして出会えたのだから。それを告げれば、美樹はにこにこと微笑んでくれた。
「今のあなたが幸せなら良かったわ。そのお相手が大将さんなら、尚の事。大将さん、私と空木様の子孫をよろしくお願いしますね?」
「もちろんですとも」
そして火坑は、手作りらしい、薄いレモン色のアイスかシャーベットを出してくれた。濃いめの味付けが多かったから口直しにと。
「アイス……ですか?」
「少し惜しいですね、美兎さん。柚子を使ったシャーベットですよ? どうぞ溶けないうちに」
「おや、本当に口当たりがさっぱりしますね?」
先に食べ始めていた空木が感心した声を上げたのだった。
美兎もスプーンでひと口食べてみると。口いっぱいに柚子の甘さと香り。少し酸っぱいが、煮付けとかスッポンスープで脂っこかった舌を適度に休ませてくれる。
ひと口、またひと口と食べていたら、あっという間になくなってしまった。
「美味しかったです!」
「お粗末様です」
さて、時間もいい頃合いになってきたので空木夫妻はJRなども使って、春日井の界隈に帰るそうだ。
今度は、そちらにも是非来て欲しいとも言われた。
「場所は、界隈に着けば迎えに行きますので。火坑さんと是非」
「わかりました」
「行きますね!」
すぐかどうかはわからないが。四月が過ぎてからがいい時期かもしれないと、火坑が言ったので。
ついでではないが、春の京都旅行で絶対お土産を買ってこようと頭の隅にメモしておいた。
「じゃ、真穂も締め切り片付けてくるから!」
と、半分嘘のような言い残しをして帰って行った。絶対、美兎がLIME以外でしか火坑と連絡していないので気遣ったのだろう。
美兎は少しカウンターにうつ伏せになってから、行儀悪く顔を上げたのだった。
「仕事以外も……バタバタでした」
「ふふ。お疲れ様です。僕でお手伝い出来ることはありますか?」
「え……っと、不動さんの件なんですけど。美作さんが最初は人間界での店にしようと言われましたので」
「いつでも言ってください。力になりますよ?」
「ありがとうございます」
ああ、本当にこの猫人は。
とてもとても、出来た彼氏様である。
なんだか、触れたい気分になってきたので怠い身体を起こして、彼に手招きをして。
口には恥ずかしくて出来なかったが、ふわふわの毛に覆われている顔でもほっぺにキスが出来たのだった。
当然驚かれてしまい、お返しにと彼からも美兎のほっぺにキスされてしまった。
美兎は心からそう思えた。
自分の祖先である、覚の空木とその妻である美樹と出会えたことだ。
はるか年上であるのに。自分の恋人である火坑もだが、年齢差を感じさせないくらい気さくで、温かで優しくて。
おまけに、現代の携帯機器などを使いこなしているとは凄い。美樹のプロフィールを見に行ったら、とても可愛らしい小物などの作品がアイコンなどに使われていた。
「かんざしもだけど、レジンでアクセサリー作るのが得意になったの。だから、それも仕事にしているわ」
直接誰かと顔を合わせて仕事にしているわけじゃないらしいので、ネット販売で切り盛りしているそうだ。それは実にやりやすい仕事かもしれない。
「好きなことがお仕事に出来るって素敵です」
「ふふ。ありがとう。美兎も出来た?」
「はい、お陰様で」
好きもあったが、犠牲にしてきたものもあった。
けど、それが全て無駄にはならなかった。
火坑達にこうして出会えたのだから。それを告げれば、美樹はにこにこと微笑んでくれた。
「今のあなたが幸せなら良かったわ。そのお相手が大将さんなら、尚の事。大将さん、私と空木様の子孫をよろしくお願いしますね?」
「もちろんですとも」
そして火坑は、手作りらしい、薄いレモン色のアイスかシャーベットを出してくれた。濃いめの味付けが多かったから口直しにと。
「アイス……ですか?」
「少し惜しいですね、美兎さん。柚子を使ったシャーベットですよ? どうぞ溶けないうちに」
「おや、本当に口当たりがさっぱりしますね?」
先に食べ始めていた空木が感心した声を上げたのだった。
美兎もスプーンでひと口食べてみると。口いっぱいに柚子の甘さと香り。少し酸っぱいが、煮付けとかスッポンスープで脂っこかった舌を適度に休ませてくれる。
ひと口、またひと口と食べていたら、あっという間になくなってしまった。
「美味しかったです!」
「お粗末様です」
さて、時間もいい頃合いになってきたので空木夫妻はJRなども使って、春日井の界隈に帰るそうだ。
今度は、そちらにも是非来て欲しいとも言われた。
「場所は、界隈に着けば迎えに行きますので。火坑さんと是非」
「わかりました」
「行きますね!」
すぐかどうかはわからないが。四月が過ぎてからがいい時期かもしれないと、火坑が言ったので。
ついでではないが、春の京都旅行で絶対お土産を買ってこようと頭の隅にメモしておいた。
「じゃ、真穂も締め切り片付けてくるから!」
と、半分嘘のような言い残しをして帰って行った。絶対、美兎がLIME以外でしか火坑と連絡していないので気遣ったのだろう。
美兎は少しカウンターにうつ伏せになってから、行儀悪く顔を上げたのだった。
「仕事以外も……バタバタでした」
「ふふ。お疲れ様です。僕でお手伝い出来ることはありますか?」
「え……っと、不動さんの件なんですけど。美作さんが最初は人間界での店にしようと言われましたので」
「いつでも言ってください。力になりますよ?」
「ありがとうございます」
ああ、本当にこの猫人は。
とてもとても、出来た彼氏様である。
なんだか、触れたい気分になってきたので怠い身体を起こして、彼に手招きをして。
口には恥ずかしくて出来なかったが、ふわふわの毛に覆われている顔でもほっぺにキスが出来たのだった。
当然驚かれてしまい、お返しにと彼からも美兎のほっぺにキスされてしまった。