名古屋錦町のあやかし料亭~元あの世の獄卒猫の○○ごはん~
第3話 界隈デビュー
まず、界隈の入り口からだが。
田城は本当に視えるようになったのか、少し驚いていた。
「なんか……こっちより騒がしい音も聞こえる?」
耳まで変わったのか、向こう側の喧騒まで聴こえているようだ。
とりあえず、細い路地裏のようなところを通り、妖達にとっての表通りに出る。そこに出たら田城はさらに驚きの声を上げて、まるで子供のように口を開けたのだ。
「すっご、すっごー!」
まるで遊園地に来たかのようなはしゃぎっぷりだ。
たしかに、美兎も慣れなかった最初の頃は似たような気持ちではいたが。
今は、慣れて新鮮さは失ったが。田城を見ていると懐かしく思えた。今日、座敷童子の真穂は影に潜んでもらっている。
田城の情報量を一気に増やさないためだ。
「とにかく、行きましょう」
「私とかもまだ行き慣れていないから、案内よろしく」
「美兎っちについていけばいーい?」
「うん」
沓木と一緒について来るように言い、はぐれないように注意する。
とにかく、人間の世界と同じようで全然違う界隈の店達に、田城は目を輝かせていたが。
楽庵に着くと、今まで以上に驚いていた。
「細!? 狭!?」
「個人経営だから、すっごく狭いんだよ」
「けど、腕前はピカイチ。この前のも美味しかったけど」
ただ今日は、香ってくる匂いが和風ではなくて洋風だった。
どこかで嗅いだことがあるような、知ってるような知っていないような。
とりあえず、引き戸を開けて入ることにした。
「こんばんはー」
「お邪魔します」
「お邪魔しまーす!」
中に入れば、先客が一人。
ぬらりひょんの間半だった。
「やあ、お嬢さん? 後ろのお嬢さん達は初めまして」
「初めまして」
「初めましてー! わ、イケオジ!!」
「ふふ。そう言ってもらえると嬉しいねぇ?」
「おじさんも妖怪ですかー?」
「ああ。僕はぬらりひょんの間半と言うよ?」
「田城でーす!」
「元気なお嬢さんだね?」
田城には、界隈でいきなり下の名前をあまり名乗らないように言いつけてある。沓木は当然それを知っているので、同じように自分の名字を名乗った。
「いらっしゃいませ。田城さんとは初めましてですね?」
美兎の恋人である火坑は調理の手を止めて、涼しい笑顔で接客してくれたのだった。
「わ! ほんとに猫!?」
「はい。肉球はありませんが、猫です」
ほらっと、毛はあるが人間のような手を見せられて、田城はさらに目を丸くしたのだった。
「えと……本当に美兎……ちゃんの彼氏さん?」
「正真正銘、美兎さんの彼氏ですとも」
「へー? 人間みたいな変身は写真で見せてもらったけど。うん、なんかかっこいい」
「ふふ。ありがとうございます。さあ、おかけ下さい」
美兎が間半の隣に座る形で、二人もそれぞれ腰掛けて。火坑から熱いおしぼりを受け取るのだった。
「あれ? メニューはないんだ?」
おしぼりと先付けを受け取ったあとに、田城がカウンターの上でメニューを探していた。
「基本的にはお任せなんですよ。リクエストを受ける場合もありますが」
「へー? 何があるんですか?」
「今日は猪のいい肉があるので、角煮をご用意しました。あとは……カレーです」
「絶品だったねぇ?」
「総大将は食べすぎです」
「角煮!? カレー!? 食べたいです!!」
「かしこまりました。では、先にスッポンのスープで温まってください」
そして、出されたスッポンのスープに。
田城は甲羅を出されたが、びっくりしたもののスマホで撮るのだった。
田城は本当に視えるようになったのか、少し驚いていた。
「なんか……こっちより騒がしい音も聞こえる?」
耳まで変わったのか、向こう側の喧騒まで聴こえているようだ。
とりあえず、細い路地裏のようなところを通り、妖達にとっての表通りに出る。そこに出たら田城はさらに驚きの声を上げて、まるで子供のように口を開けたのだ。
「すっご、すっごー!」
まるで遊園地に来たかのようなはしゃぎっぷりだ。
たしかに、美兎も慣れなかった最初の頃は似たような気持ちではいたが。
今は、慣れて新鮮さは失ったが。田城を見ていると懐かしく思えた。今日、座敷童子の真穂は影に潜んでもらっている。
田城の情報量を一気に増やさないためだ。
「とにかく、行きましょう」
「私とかもまだ行き慣れていないから、案内よろしく」
「美兎っちについていけばいーい?」
「うん」
沓木と一緒について来るように言い、はぐれないように注意する。
とにかく、人間の世界と同じようで全然違う界隈の店達に、田城は目を輝かせていたが。
楽庵に着くと、今まで以上に驚いていた。
「細!? 狭!?」
「個人経営だから、すっごく狭いんだよ」
「けど、腕前はピカイチ。この前のも美味しかったけど」
ただ今日は、香ってくる匂いが和風ではなくて洋風だった。
どこかで嗅いだことがあるような、知ってるような知っていないような。
とりあえず、引き戸を開けて入ることにした。
「こんばんはー」
「お邪魔します」
「お邪魔しまーす!」
中に入れば、先客が一人。
ぬらりひょんの間半だった。
「やあ、お嬢さん? 後ろのお嬢さん達は初めまして」
「初めまして」
「初めましてー! わ、イケオジ!!」
「ふふ。そう言ってもらえると嬉しいねぇ?」
「おじさんも妖怪ですかー?」
「ああ。僕はぬらりひょんの間半と言うよ?」
「田城でーす!」
「元気なお嬢さんだね?」
田城には、界隈でいきなり下の名前をあまり名乗らないように言いつけてある。沓木は当然それを知っているので、同じように自分の名字を名乗った。
「いらっしゃいませ。田城さんとは初めましてですね?」
美兎の恋人である火坑は調理の手を止めて、涼しい笑顔で接客してくれたのだった。
「わ! ほんとに猫!?」
「はい。肉球はありませんが、猫です」
ほらっと、毛はあるが人間のような手を見せられて、田城はさらに目を丸くしたのだった。
「えと……本当に美兎……ちゃんの彼氏さん?」
「正真正銘、美兎さんの彼氏ですとも」
「へー? 人間みたいな変身は写真で見せてもらったけど。うん、なんかかっこいい」
「ふふ。ありがとうございます。さあ、おかけ下さい」
美兎が間半の隣に座る形で、二人もそれぞれ腰掛けて。火坑から熱いおしぼりを受け取るのだった。
「あれ? メニューはないんだ?」
おしぼりと先付けを受け取ったあとに、田城がカウンターの上でメニューを探していた。
「基本的にはお任せなんですよ。リクエストを受ける場合もありますが」
「へー? 何があるんですか?」
「今日は猪のいい肉があるので、角煮をご用意しました。あとは……カレーです」
「絶品だったねぇ?」
「総大将は食べすぎです」
「角煮!? カレー!? 食べたいです!!」
「かしこまりました。では、先にスッポンのスープで温まってください」
そして、出されたスッポンのスープに。
田城は甲羅を出されたが、びっくりしたもののスマホで撮るのだった。