名古屋錦町のあやかし料亭~元あの世の獄卒猫の○○ごはん~
第2話 待ち神
さあてさて。
花見などの参拝客もまあまあ多いが、目的の男女は未だ来ず。
だが、すぐ来ないのも無理はない。春に満ち溢れた京都は今何処もかしこも観光客でいっぱいだ。
北野天満宮は、参拝ツアーや挙式も受け付けているので、週末は特に人混みであふれかえっている。
元飼い猫だった猫人の火坑は、恋人の人間の女性を連れて京都にやって来ている。元飼い主を蔑ろにはしていないが、美兎をあちこち連れてやっているのだろう。
恋人を楽しませたい気持ちはよくわかる。
特に、今の世では自分達の足であちこち回るのが主流だ。はるか昔、道真が人間だった頃は一応貴族だったので牛車で回ってたから。
「今はどの辺りにいるだろうか……?」
神使である狐達から、清水寺には向かったと知らせがあったが。そこからだと、そこそこ離れているここにはまだまだ来れないだろう。
【やっほー?】
本殿で二人が来るのを待っていたら、彼らではなく美兎の守護に憑いている座敷童子が来た。しかも、本体ではなく分身で。
「珍しいね? 君は私を苦手としてただろう?」
【そうも言ってらんないわよ】
分身体、しかも本体が人化する時とは違って、人間の子供のような姿になっていた。いわゆる、省エネモードと言うやつだろう。
「……順調そうかな?」
【まあ、ね? あんたの部下達にも世話になってるし、京都を満喫中よ? 土産もそこそこ買っていたわ】
初々しいわよね、と真穂は肩を落とした。
それくらい、あの元飼い猫は充実した日々を送っているのだろう。道真はくくっと喉の奥で笑った。
「であれば、そろそろこちらへと来てくれるのかな?」
【そーそー。またあんたの部下が運転してるタクシーで来るわよ? 美兎達着物だし、美兎はそんなに着物に慣れていないからね?】
もう到着間近らしく、真穂はすぐに分身体を消してしまった。
なら、と道真は本殿から表に出てみると。人混みが多くて美兎達をすぐに見つけられなかった。
だが、道真はヒトから神になった存在。
人混みが凄くとも、火坑達を探せる眼を持っているのだ。妖力を察知するのに、目を凝らせば。門の近くでタクシーから降りる男女が見えた。
人化は地味だと言っていたが、たしかに地味だ。妖が人間のようになる時は大変美しいことが多いのに。
けれど、可愛らしく着飾った美兎の隣で見劣りしないぐらいには美しくしてある。飛び抜けて美しくないだけだった。
「ふふ。実に初々しいね?」
火坑はともかく、美兎は成人して数年経っていても、まるで少女のように愛らしい。着物もよく似合っているし、実に春らしかった。
この社に植っている梅の見頃に来て欲しかったが、京都の寒さに慣れていない美兎には厳しいだろう。
尾張である愛知も盆地ではあるが、山おろしが酷い京都ではもっとキリキリした寒さで凍えそうになる。
が、今の道真は人間じゃないので寒さはあまり関係ないが。
「……早くおいで?」
そして、大神とは違う良縁結びの呪いをしてあげようではないか。
まだまだ参道から遠いので、道真も着物に着替えて二人の方へと歩いて行った。
花見などの参拝客もまあまあ多いが、目的の男女は未だ来ず。
だが、すぐ来ないのも無理はない。春に満ち溢れた京都は今何処もかしこも観光客でいっぱいだ。
北野天満宮は、参拝ツアーや挙式も受け付けているので、週末は特に人混みであふれかえっている。
元飼い猫だった猫人の火坑は、恋人の人間の女性を連れて京都にやって来ている。元飼い主を蔑ろにはしていないが、美兎をあちこち連れてやっているのだろう。
恋人を楽しませたい気持ちはよくわかる。
特に、今の世では自分達の足であちこち回るのが主流だ。はるか昔、道真が人間だった頃は一応貴族だったので牛車で回ってたから。
「今はどの辺りにいるだろうか……?」
神使である狐達から、清水寺には向かったと知らせがあったが。そこからだと、そこそこ離れているここにはまだまだ来れないだろう。
【やっほー?】
本殿で二人が来るのを待っていたら、彼らではなく美兎の守護に憑いている座敷童子が来た。しかも、本体ではなく分身で。
「珍しいね? 君は私を苦手としてただろう?」
【そうも言ってらんないわよ】
分身体、しかも本体が人化する時とは違って、人間の子供のような姿になっていた。いわゆる、省エネモードと言うやつだろう。
「……順調そうかな?」
【まあ、ね? あんたの部下達にも世話になってるし、京都を満喫中よ? 土産もそこそこ買っていたわ】
初々しいわよね、と真穂は肩を落とした。
それくらい、あの元飼い猫は充実した日々を送っているのだろう。道真はくくっと喉の奥で笑った。
「であれば、そろそろこちらへと来てくれるのかな?」
【そーそー。またあんたの部下が運転してるタクシーで来るわよ? 美兎達着物だし、美兎はそんなに着物に慣れていないからね?】
もう到着間近らしく、真穂はすぐに分身体を消してしまった。
なら、と道真は本殿から表に出てみると。人混みが多くて美兎達をすぐに見つけられなかった。
だが、道真はヒトから神になった存在。
人混みが凄くとも、火坑達を探せる眼を持っているのだ。妖力を察知するのに、目を凝らせば。門の近くでタクシーから降りる男女が見えた。
人化は地味だと言っていたが、たしかに地味だ。妖が人間のようになる時は大変美しいことが多いのに。
けれど、可愛らしく着飾った美兎の隣で見劣りしないぐらいには美しくしてある。飛び抜けて美しくないだけだった。
「ふふ。実に初々しいね?」
火坑はともかく、美兎は成人して数年経っていても、まるで少女のように愛らしい。着物もよく似合っているし、実に春らしかった。
この社に植っている梅の見頃に来て欲しかったが、京都の寒さに慣れていない美兎には厳しいだろう。
尾張である愛知も盆地ではあるが、山おろしが酷い京都ではもっとキリキリした寒さで凍えそうになる。
が、今の道真は人間じゃないので寒さはあまり関係ないが。
「……早くおいで?」
そして、大神とは違う良縁結びの呪いをしてあげようではないか。
まだまだ参道から遠いので、道真も着物に着替えて二人の方へと歩いて行った。