名古屋錦町のあやかし料亭~元あの世の獄卒猫の○○ごはん~
第5話 旅館を予約していた
色々緊張の連続だった。
北野天満宮に着くなり、祭神である道真から縁結びを強くしてもらってから。
参拝をして、ここでもまたお守りを買ってから。
宿にチェックインするために、タクシーで移動したのだが。
「響也……さん」
「はい?」
「ほ……んとうに、ここですか?」
「ええ、こちらですよ?」
いかにも、『The・高級旅館』と言ったたたずまい。
間違っているんじゃ、と思ったら火坑は首を横に振って肯定の意思を伝えてきた。
「た、たたた、高いんじゃ!?」
「お金の話はしましたよね?」
「していただきました、けど!? こんな素敵なとこにいいんですか!?」
「ふふ。驚きと喜びが混じっていますね? 僕としては嬉しいですよ?」
「……うう」
至れり尽くせりとは、まさにこのことでは。
今日一度も、美兎には支払いをさせてはいない。交通費もだが、お土産もお守りもおみくじも、全部火坑が払ってくれたのだ。
甘やかし過ぎではないかと思うが、火坑がお土産屋で言ってたのだ。
『女性を立てるのは、男として当然ですよ?』
と言い切って、全額負担してくれたのだから。
多少の申し訳なさはあったが、正直言って嬉しかった。
本当に、美兎にはもったいないくらいの彼氏だ。
旅館に入る前に、真穂が影から出てきて結界を張り、ずっと預けていた旅行鞄を出してもらった。
一泊だから、そこまで荷物はないのに、また火坑が全部持ってくれた。
「いてら〜」
実質真穂もついていくことになるが、美兎の影に潜っているから別空間らしい。
宿に入ると、すぐ受付だったので火坑が美兎の手を引きながら向かった。
「予約していた、香取ですが」
「お待ちしておりました」
綺麗な着物を着た女性だったが、火坑は特に気にならずに受付を済ませていく。美兎が恋人だから、と再確認出来るようで嬉しかった。
受付が終わり、別のスタッフに部屋まで案内されて。
てっきり別々かと思ったら、ツインの和風ベッドがある部屋だった。
「わあ!?」
飾り障子の向こうには、京都の町並みが一望出来た。
年甲斐もなくはしゃぎそうだったが、簡単にスタッフから説明を受けてから備え付けのお茶を飲むことにした。
「さて。お昼ごはんはここでもいいですが、着物を返却する近くに。美味しい創作料理のお店もあるんですよ? どちらがいいですか?」
「創作料理ですか!?」
「ふふ、そちらにしましょうか?」
ただ混み具合を確認するのに、火坑がスマホで連絡してみると。今はちょうど空いているらしい。スマホで聞くくらいだから、そのお店の店主もまた妖か何かだろうか。
旅館を出て、またタクシーで二年坂近くで下ろしてもらうと。少し入り組んだ細い通路を通れば、その店の看板が見えた。
「創作料理、まほろば?」
「僕の知人兄弟が店主なんです」
「ご兄弟でですか?」
「ええ。…………本性は一つ目小僧です」
「!」
今は人間のフリをしているので、バレることはないだろうが。
引き戸を火坑が開けると、中から男性二人の声が聞こえてきた。
北野天満宮に着くなり、祭神である道真から縁結びを強くしてもらってから。
参拝をして、ここでもまたお守りを買ってから。
宿にチェックインするために、タクシーで移動したのだが。
「響也……さん」
「はい?」
「ほ……んとうに、ここですか?」
「ええ、こちらですよ?」
いかにも、『The・高級旅館』と言ったたたずまい。
間違っているんじゃ、と思ったら火坑は首を横に振って肯定の意思を伝えてきた。
「た、たたた、高いんじゃ!?」
「お金の話はしましたよね?」
「していただきました、けど!? こんな素敵なとこにいいんですか!?」
「ふふ。驚きと喜びが混じっていますね? 僕としては嬉しいですよ?」
「……うう」
至れり尽くせりとは、まさにこのことでは。
今日一度も、美兎には支払いをさせてはいない。交通費もだが、お土産もお守りもおみくじも、全部火坑が払ってくれたのだ。
甘やかし過ぎではないかと思うが、火坑がお土産屋で言ってたのだ。
『女性を立てるのは、男として当然ですよ?』
と言い切って、全額負担してくれたのだから。
多少の申し訳なさはあったが、正直言って嬉しかった。
本当に、美兎にはもったいないくらいの彼氏だ。
旅館に入る前に、真穂が影から出てきて結界を張り、ずっと預けていた旅行鞄を出してもらった。
一泊だから、そこまで荷物はないのに、また火坑が全部持ってくれた。
「いてら〜」
実質真穂もついていくことになるが、美兎の影に潜っているから別空間らしい。
宿に入ると、すぐ受付だったので火坑が美兎の手を引きながら向かった。
「予約していた、香取ですが」
「お待ちしておりました」
綺麗な着物を着た女性だったが、火坑は特に気にならずに受付を済ませていく。美兎が恋人だから、と再確認出来るようで嬉しかった。
受付が終わり、別のスタッフに部屋まで案内されて。
てっきり別々かと思ったら、ツインの和風ベッドがある部屋だった。
「わあ!?」
飾り障子の向こうには、京都の町並みが一望出来た。
年甲斐もなくはしゃぎそうだったが、簡単にスタッフから説明を受けてから備え付けのお茶を飲むことにした。
「さて。お昼ごはんはここでもいいですが、着物を返却する近くに。美味しい創作料理のお店もあるんですよ? どちらがいいですか?」
「創作料理ですか!?」
「ふふ、そちらにしましょうか?」
ただ混み具合を確認するのに、火坑がスマホで連絡してみると。今はちょうど空いているらしい。スマホで聞くくらいだから、そのお店の店主もまた妖か何かだろうか。
旅館を出て、またタクシーで二年坂近くで下ろしてもらうと。少し入り組んだ細い通路を通れば、その店の看板が見えた。
「創作料理、まほろば?」
「僕の知人兄弟が店主なんです」
「ご兄弟でですか?」
「ええ。…………本性は一つ目小僧です」
「!」
今は人間のフリをしているので、バレることはないだろうが。
引き戸を火坑が開けると、中から男性二人の声が聞こえてきた。