名古屋錦町のあやかし料亭~元あの世の獄卒猫の○○ごはん~
第9話『宗睦のカクテル』
なかなかに、愛らしい笑顔の人間だと思った。
まったくゼロではないが、宗睦もバーテンダーとなってそこそこ長い。身を置いているBAR『wish』でも魑魅魍魎の変化で、自分と同類である狐狸の幻影術は様々な美女を見てきたものだが。
まあまあ、彼女らのような妖艶さはなくとも、なかなか愛らしい人間。火坑の見立ては間違っていないと思うくらいに。
酒はあまり強くないらしいが、甘めの味付けが好きらしく。宗睦が最初に出したウェルカムドリンクのカクテルもだが、今さっき出したピノノワールも実に美味しそうに飲んでくれている。
酒を勧める側としては嬉しい限りだ。
しかし、今日の楽養が出すメニューはどれも旨そうなものばかりだ。
たしかに、祝いだから仕様がないもあるが。どれもこれも、宗睦の好みでもある。出張費とは別に、一部食べさせてやると、主人である黒豹の霊夢が言ってくれたのだがいつになるのやら。
「牡蠣の炊き込みご飯も美味しいです!」
しかしまあ。
湖沼美兎と言う女は、見ていて飽きない。
宗睦が勧めた酒もだが、霊夢達が出していく料理も本当に美味しそうに食べているのでこっちまで笑顔が伝染しそうになった。
さすがに、飯ものの時には酒を勧めなうようにしたので、その間に一度店に戻って生地を取りに行ったろくろ首の盧翔の様子を見ることにした。
「どうなのよん、今日のピザの出来」
「ピザじゃなくて、ピッツァな!」
「へーへー」
自分の店のように、石窯はこの店にがないので。元狗神の蘭霊に教わりながら、オーブン窯でなんとか焼いているようだ。
「肉っ気が多いって、大将や蘭さんに聞いたからね? ちょっと野菜多めにしよーかと」
「あの子の苦手な食べ物聞いてるのん?」
「ああ。俺も本人に直接聞いたのもあるけど。蘭さん、美兎さんってキノコとコンニャク以外ありましたっけ?」
「俺もその程度だ。花菜は?」
「あ……あと、空豆やグリンピースもそんなに得意じゃないって」
「セーフセーフ! 空豆はともかく、ものによっちゃグリンピースは入れてたな?」
とりあえず、ピザ組も大丈夫なようだ。それにしては、見えているピザのシルエットが丸ではなく四角いのが気になったが。
「盧翔ぉ〜? 急いで作った割には、なんか珍しそうなもん作っているじゃなぁい?」
「へへん。イタリアのローマじゃ、むしろ丸よか四角いのが普通なんだぜ? 地元じゃ、『アルターリオ』とか呼ばれてんだ」
「ほー?」
「ふーん?」
「この作り方だと、宅配にもある四分割の味変もやりやすい。今日はマルゲリータとアンチョビのにしてみた!」
「美味そう……」
「美味しそう……」
「ヨダレ出そう……」
具材も聞けたので、宗睦は早速ピザに合うカクテル作りの準備に入った。
ビール系なら、ジンジャエールと割ったシャンディガフ。トマトジュースと合わせたレッドアイ。
ワインベースなら、白ワインと炭酸のスプリッツァーにカシスを混ぜたキールロワイヤル。
スピリッツなら、ジントニック。ソルティドック。とか、まあまあ上げたら切りがないので。
せっかくだから、本人達に選んでもらおう。腹の方はまだ満たされていないらしいが、これから出てくる盧翔のピザは少々重いですまないだろうから。
「ちょいと、美兎ちゃんに火坑ちゃん?」
「はい?」
「なんでしょう?」
ちょうど、牡蠣の炊き込みご飯を軽く一杯食べ終えたところだった。
「次くらいに、盧翔のピッツァが出来るそうよん? お供にするお酒はどうするん? ワインなら追加しちゃうけど、せっかくだからカクテルにしてみなぁい?」
「そうですね。せっかくのオススメですし」
「チカさん、どんなカクテルがあるんですか?」
提案に乗ってくれたので、先程悩んだカクテルの一覧をすぐに伝えたら。美兎はキールロワイヤルに、火坑はソルティドックを選んだ。
ソルティドックは、一応『wish』からグラスを持ち出しているので塩はレモン汁を使って、グラスの縁にスノースタイルと言う雪化粧のようにつけていく。
次に、グラスに氷を入れてグレープフルーツジュースとウォッカを入れて、マドラーで軽くステアするだけ。仕上げにレモンの輪切りを添えて。
美兎の方も、ビアカクテル用のグラスに材料を入れたらステアするだけ。
カウンターテーブルの上が空になってから、それらをコースターもセットして置いたのだった。
「わ、綺麗! 私、カクテルって少し勘違いしてたんです」
「勘違いかい?」
「はい。テレビの演出とかドラマとかであるじゃないですか? シェイカーでしたっけ? カクテルってあれで全部作るものかと」
「あっはっは! たしかに、人間もだが妖でも知らない連中は勘違いするねー?」
宗睦も酒の世界を知るまでは、美兎と似た疑問を持っていた。しかし、錦の界隈に出入りするようになり、師匠の下で修行するようになってからそれは違うとわかった。
その疑問を持つ存在は人間や妖問わずにまだまだ多いだろう。
もっと酒を知りたいのなら、『wish』にも火坑とかとおいで、と一応名刺を渡しておいた。
「おっと! アルターリオの完成だぜ!」
店中に広がる、ピザ独特のいい香り。
祝いも兼ねているのでかなり大きかったため、霊夢の提案で全員で食べることになった。
御相伴出来たので、宗睦も遠慮なくマルゲリータの部分を食べたのだが。さすがは、ピザ職人。美味過ぎだと絶賛した後に、奴の背中を強く叩いたのだった。
まったくゼロではないが、宗睦もバーテンダーとなってそこそこ長い。身を置いているBAR『wish』でも魑魅魍魎の変化で、自分と同類である狐狸の幻影術は様々な美女を見てきたものだが。
まあまあ、彼女らのような妖艶さはなくとも、なかなか愛らしい人間。火坑の見立ては間違っていないと思うくらいに。
酒はあまり強くないらしいが、甘めの味付けが好きらしく。宗睦が最初に出したウェルカムドリンクのカクテルもだが、今さっき出したピノノワールも実に美味しそうに飲んでくれている。
酒を勧める側としては嬉しい限りだ。
しかし、今日の楽養が出すメニューはどれも旨そうなものばかりだ。
たしかに、祝いだから仕様がないもあるが。どれもこれも、宗睦の好みでもある。出張費とは別に、一部食べさせてやると、主人である黒豹の霊夢が言ってくれたのだがいつになるのやら。
「牡蠣の炊き込みご飯も美味しいです!」
しかしまあ。
湖沼美兎と言う女は、見ていて飽きない。
宗睦が勧めた酒もだが、霊夢達が出していく料理も本当に美味しそうに食べているのでこっちまで笑顔が伝染しそうになった。
さすがに、飯ものの時には酒を勧めなうようにしたので、その間に一度店に戻って生地を取りに行ったろくろ首の盧翔の様子を見ることにした。
「どうなのよん、今日のピザの出来」
「ピザじゃなくて、ピッツァな!」
「へーへー」
自分の店のように、石窯はこの店にがないので。元狗神の蘭霊に教わりながら、オーブン窯でなんとか焼いているようだ。
「肉っ気が多いって、大将や蘭さんに聞いたからね? ちょっと野菜多めにしよーかと」
「あの子の苦手な食べ物聞いてるのん?」
「ああ。俺も本人に直接聞いたのもあるけど。蘭さん、美兎さんってキノコとコンニャク以外ありましたっけ?」
「俺もその程度だ。花菜は?」
「あ……あと、空豆やグリンピースもそんなに得意じゃないって」
「セーフセーフ! 空豆はともかく、ものによっちゃグリンピースは入れてたな?」
とりあえず、ピザ組も大丈夫なようだ。それにしては、見えているピザのシルエットが丸ではなく四角いのが気になったが。
「盧翔ぉ〜? 急いで作った割には、なんか珍しそうなもん作っているじゃなぁい?」
「へへん。イタリアのローマじゃ、むしろ丸よか四角いのが普通なんだぜ? 地元じゃ、『アルターリオ』とか呼ばれてんだ」
「ほー?」
「ふーん?」
「この作り方だと、宅配にもある四分割の味変もやりやすい。今日はマルゲリータとアンチョビのにしてみた!」
「美味そう……」
「美味しそう……」
「ヨダレ出そう……」
具材も聞けたので、宗睦は早速ピザに合うカクテル作りの準備に入った。
ビール系なら、ジンジャエールと割ったシャンディガフ。トマトジュースと合わせたレッドアイ。
ワインベースなら、白ワインと炭酸のスプリッツァーにカシスを混ぜたキールロワイヤル。
スピリッツなら、ジントニック。ソルティドック。とか、まあまあ上げたら切りがないので。
せっかくだから、本人達に選んでもらおう。腹の方はまだ満たされていないらしいが、これから出てくる盧翔のピザは少々重いですまないだろうから。
「ちょいと、美兎ちゃんに火坑ちゃん?」
「はい?」
「なんでしょう?」
ちょうど、牡蠣の炊き込みご飯を軽く一杯食べ終えたところだった。
「次くらいに、盧翔のピッツァが出来るそうよん? お供にするお酒はどうするん? ワインなら追加しちゃうけど、せっかくだからカクテルにしてみなぁい?」
「そうですね。せっかくのオススメですし」
「チカさん、どんなカクテルがあるんですか?」
提案に乗ってくれたので、先程悩んだカクテルの一覧をすぐに伝えたら。美兎はキールロワイヤルに、火坑はソルティドックを選んだ。
ソルティドックは、一応『wish』からグラスを持ち出しているので塩はレモン汁を使って、グラスの縁にスノースタイルと言う雪化粧のようにつけていく。
次に、グラスに氷を入れてグレープフルーツジュースとウォッカを入れて、マドラーで軽くステアするだけ。仕上げにレモンの輪切りを添えて。
美兎の方も、ビアカクテル用のグラスに材料を入れたらステアするだけ。
カウンターテーブルの上が空になってから、それらをコースターもセットして置いたのだった。
「わ、綺麗! 私、カクテルって少し勘違いしてたんです」
「勘違いかい?」
「はい。テレビの演出とかドラマとかであるじゃないですか? シェイカーでしたっけ? カクテルってあれで全部作るものかと」
「あっはっは! たしかに、人間もだが妖でも知らない連中は勘違いするねー?」
宗睦も酒の世界を知るまでは、美兎と似た疑問を持っていた。しかし、錦の界隈に出入りするようになり、師匠の下で修行するようになってからそれは違うとわかった。
その疑問を持つ存在は人間や妖問わずにまだまだ多いだろう。
もっと酒を知りたいのなら、『wish』にも火坑とかとおいで、と一応名刺を渡しておいた。
「おっと! アルターリオの完成だぜ!」
店中に広がる、ピザ独特のいい香り。
祝いも兼ねているのでかなり大きかったため、霊夢の提案で全員で食べることになった。
御相伴出来たので、宗睦も遠慮なくマルゲリータの部分を食べたのだが。さすがは、ピザ職人。美味過ぎだと絶賛した後に、奴の背中を強く叩いたのだった。