名古屋錦町のあやかし料亭~元あの世の獄卒猫の○○ごはん~

第2話 パーティー開始

 駅を乗り換えて、(さかえ)に到着した美兎(みう)真穂(まほ)

 表の(にしき)を通ったら、裏通りに入って角の角を曲がり。

 昼間だけども、妖達が賑わう界隈(かいわい)に到着した。ここまでは何もなくいつも通り。夢に出てきた妖が何かをするわけでもなかった。

 楽庵(らくあん)に到着する前に、大学生姿に変身した真穂も何も言わなかった。


「さあさあ! 今日は遅れながらのクリスマスパーティーよ! 恋人同士のとこに漬け込むのはごめんだけどー?」
「あ、ううん。大丈夫、賑やかなの好きだし」
「まあ、最終的には二人にしてあげるわよ」
「そ、そう」


 二人っきりになっても、あの甘い雰囲気になったらどうなるか。猫頭の場合だと、キスするのに不快感。主に猫の舌は痛いだからだろうと、人間の姿で対応してくれたのだが。

 痛くても、猫の姿でもキスしてみたいと言うのは。美兎がマゾだからかと思わずにいられない。とりあえず、賑やかになるのなら絶対楽しいはず。

 人間達もだが、社会人になって恵まれた環境に関われたのだから。感謝しか思い浮かばない。

 そのためにも、抱えている手製のブッシュドノエルのケーキの箱を壊してはいけないのだ。

 そして到着すれば、クリスマスイヴは終わっているのに。クリスマスの飾り付けが綺麗にしてある楽庵に到着した。

 それと、昼間なのに引き戸に鍵がかかっていなかったので、素直に開ければ。

 勢いよく、美兎の前に銀と金のテープが飛んできた。


「メリークリスマス、美兎さん。真穂さん」
「め、メリークリスマス! 火坑(かきょう)さん!」
「メリクリ〜」
「さあ、中に入ってください。外は冷えますからね?」


 少し大きめのクラッカーを持っていた猫人は、クリスマスらしくサンタの赤帽をかぶっていた。料理をするためか、他はいつも通り服装ではあるが。

 美兎は、入る前に彼にケーキの箱を差し出した。


「こ、これ。約束していたケーキです! 会社の先輩に教わって作ったブッシュドノエルのケーキですが」
「! クリスマスのケーキですね! ありがとうございます! 後ほど、一緒に食べませんか?」
「は、はい!」


 一緒に、と言うことは最後は二人っきりということ。初デート以来のイチャイチャを予想してしまったが、今は真穂がいるのでそこは深く考えない。

 ただ、パーティーをするのにも人数が少々寂しいような。とは言え、火坑の師匠の店である楽養(らくよう)に比べたらかなり狭いので、この間の人数は無理だろうが。


「ふふ。美兎さんにせめてものサプライズです」
「はい?」
「真穂も詳しくは聞いてないよー?」
「今日は代わる代わる、色んな方がクリスマスを届けてくださいます」
「え!?」


 誰だろう、と、少しワクワクしながらおしぼりで手を温めていたら。すぐに引き戸が開いたのだった。


「お久しぶりー!」
「で」
「やん」
「す!」
美作(みまさか)さん!」


 最初に来てくれたのは、本当に久しぶりに出会う美作辰也(たつや)とその守護についてるかまいたち三兄弟。

 手にはバスケットの花籠が。


湖沼(こぬま)さん、ほんと久しぶり。火坑さんとお付き合い始まったって聞いたよ。けど全然会えなかったし」
「え、え。いつそれを?」
「俺が聞いたのは、ほんと三日前だけど。二人ともバレバレだったから、見てて面白かったよ?」
「あう……」


 ますます恥ずかしくなってきたが、今日はクリスマスパーティー。

 せっかくだから、と美兎と辰也に火坑が心の欠片を求めた。

 代金と言うよりかはパーティー向けに。

 出てきたのは、美兎が骨付きの鳥もも肉。辰也が豚バラブロック肉だった。


「こちらでフライドチキンと、時短の角煮でも作ってみましょうか?」
「わーい!」
『豪勢!』
「わー、昼間から飲めるなんてラッキー!」
「ですね!」


 これから誰がやってくるかはわからないが、楽庵主催のクリスマスパーティーの開始となった。
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