あの日の帰り道


「咲季ちゃん……」



上杉くんが呟いて心配そうに私を見つめる。



すると突然盛大なため息が聞こえた。



「………ごめん咲季。そんなに謝らないで」

頭上から聞こえた声は、さっきと別人のように優しい声だった。



「大丈夫だよ。喧嘩なんてしないから」

目の前の上杉くんが少しバツが悪そうに、申し訳なさそうに言いながら私へと手をのばす。



が。



触れられる前に、相沢くんに後ろへと引っ張られる。



「気安く触るな」


「………お前こそ、咲季ちゃんが怖がってるのを分かっててやってるのか?」



また、口喧嘩?



「………咲季ちゃんやっぱ凄ぇわ。
コイツ等がガチで取り合いとか初めて見たわ」



山本弟くんのからかう声で思わず辺りを見渡した。


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