あの日の帰り道
言葉を遮って拒否する彼女。
顔は笑っているけど、立てないのは重傷だと思うから思わず声を荒らげた。
「どう見ても大丈夫じゃないでしょ!救急車呼ぶよ!」
「止めてってば。本当に大丈夫だから。ちょっと足を捻っただけだってば」
捻った?だけ?
立てない原因を聞いてもまだ納得がいかなくて彼女を軽く睨む。
「本当だよ。痛いのは傷だけ。立とうとすると足首が痛むけど捻った程度だと思う。こんなんで救急車に乗るなんて恥ずかしいよ」
呆れるように言う彼女の言葉に嘘は無さそうだと感じた私は、とりあえずバッグからウエットティッシュを取り出して膝の血を拭きながら話かけた。
「他に誰か連絡つかないの?」
「親が家にいるはずなんだけど……
隣の家に行ってるのかな?」
「隣?そこの番号はわからないの?」
「………元彼の家なんだよね…。
連絡しずらいんだよなぁ…」
「そんな事言ってる場合じゃないと思うけど?」
8月の終わりと言えどまだ暑い日が続いている。
このままここで待ってるだけでも熱中症になりかねない。
私が空を見上げていたからか、彼女はため息をつきながらスマホを弄って何処かへ電話した。