あの日の帰り道


「……あ、晃司?」



………こうじ?

聞き慣れた名前にドキリと心臓が騒ぐ。



「お母さんいる?……ちょっと、国道沿いで怪我して動けなくて………うん………」



親しげに話す相手が元彼なのは想像がついた。

話してる彼女の表情がそう物語っていたから。



同じ名前というだけで、彼女の電話の声を盗み聞きしている自分に嫌気がした。



「あ、お母さん?隣に行く時もスマホくらい持っててよ。………うん、ちょうど国道に出るとこ…………うん……」



彼女が今いる場所を説明していて思い出した。


彼女が国道へと出てきた横道。

確かそっちに行くと相沢くんの家の方角。



偶然の一致に胸の鼓動が速くなるのを感じた。



「あ、晃司、うん。ありがと…」



妙な胸騒ぎが私を急かす。


< 118 / 248 >

この作品をシェア

pagetop