あの日の帰り道
「……あ、晃司?」
………こうじ?
聞き慣れた名前にドキリと心臓が騒ぐ。
「お母さんいる?……ちょっと、国道沿いで怪我して動けなくて………うん………」
親しげに話す相手が元彼なのは想像がついた。
話してる彼女の表情がそう物語っていたから。
同じ名前というだけで、彼女の電話の声を盗み聞きしている自分に嫌気がした。
「あ、お母さん?隣に行く時もスマホくらい持っててよ。………うん、ちょうど国道に出るとこ…………うん……」
彼女が今いる場所を説明していて思い出した。
彼女が国道へと出てきた横道。
確かそっちに行くと相沢くんの家の方角。
偶然の一致に胸の鼓動が速くなるのを感じた。
「あ、晃司、うん。ありがと…」
妙な胸騒ぎが私を急かす。