あの日の帰り道


電話を終えた彼女が私に話しかけた。



「ごめんね、手当てしてくれてありがとう。……あなたも高校生?」



素性を聞かれてドキリとした。

なんとなく、直感で名乗ったらダメだと思った。



「うん、高3だよ。それよりお母さん来てくれるの?」

「あ、うん。すぐ来るって。心配してくれてありがとうございます先輩。私、高2で…」
「それなら私もう行くね」



彼女が相沢くんと同級生だと聞いて、ほぼ確信した。



「実は急がないとバイトに遅れるからもう行くね。お大事にね」

「あ、あの、名前」



彼女の声を無視して自転車で走り出した。


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