あの日の帰り道


唇に柔らかな感触が触れた。



相沢くんの指とは違う感触。

それがなんなのか?と、無意識に閉じていた目を薄く開いた。

そこには近すぎる相沢くんの閉じた瞼が見えてすぐまた目を閉じた。



そしてまた、今度ははっきりわかるくらい柔らかな感触が押し当てられた。



………キ、ス?



「……咲季…好きだよ」



蕩けるような甘い声と三度目のキスを受けて足が崩れ落ちそうになるが相沢くんに支えられて顔を厚い胸板に押し当てられた。



「………ごめん咲季。
嬉しくって暴走した」



耳元で少しやんちゃな声が聞こえると
さっきのキスの感触が蘇る。



あまりの恥ずかしさに、相沢くんの服を掴んで顔を隠す。



「………咲季、可愛いすぎる…」



ぎゅっと再び抱きしめられて頭を撫でながら耳元に甘い声が聞こえたらまた立っていられなくなる。



けれど。



突然、相沢くんが私を引き剥がした。



「………行こう咲季」



相沢くんに肩を抱かれ支えられながらバイクのそばまでよろよろと歩く。


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