あの日の帰り道
「………それ以上先に行かないで」
耳元で呟かれた言葉の意味がわからなかった。
抱きしめられたままズルズル引っ張られて後退する。
「何かあっても助けられないから」
「ご、ごめん」
一人で浮かれて波打ち際に立っていたけど、気付くと足首の上の方まで海水に浸かる位置まできていた。
そのことに気付いてすぐ謝ったけど、相沢くんは手を離してくれなかった。
「………そのまま海に引きずり込まれるんじゃないかと思った」
後ろから抱きしめられたまま襟首に相沢くんの吐息を感じた。
思わずビクッと身体を強張らせる。
その感覚が今朝の出来事を思い出させて顔が熱くなる。
思ってもみなかった急展開に今頃焦りだす。
相沢くんが好き。
でも付き合えない。付き合いたくない。
そう思っていたのに……。
好きだから、初めてのキスの相手が相沢くんで嬉しかった。
けど。
それも卒業までと割り切らなきゃ……。